第二十四回/長崎県美術館
長崎市にある長崎県美術館。その成り立ちから今を辿ります。

 


当時の長崎県立美術博物館の全景(2002年)

前身の長崎県立美術博物館について
長崎県立美術博物館の開設は1965(昭和40)年10月、長崎国際文化センター建設事業の一環として長崎市立山に完成しました。
1968(昭和43)年には、隣接する形で講堂兼展示室(中部記念講堂)が完成、その後1980(昭和55)年11月に展示室は地下1階、地上3階建ての常設展示館も増築されました。
長崎国際文化センター 建設事業とは
 被爆から10年を迎えるにあたって文化興隆による恒久の平和を確立しようと
 発案された文化施設建設計画の総称です。
 1959(昭和34)年の長崎水族館の完成に始まり、長崎県立美術博物館の
 完成でこの建設計画は完了しました。
 
九州では先駆けの県立美術館
1965年完成・開設当時、全国的にみても県立の美術館は少なく(九州では福岡県立美術館に次いで2番目にできました)、県内外からも期待が寄せられました。しかし名前が示すように、美術館と(歴史)博物館の機能を併せ持った人文科学系の総合博物館は『開設当初の課題は収蔵品不足と運営である』と新聞記事にも取り上げられたほどで実現は容易ではありませんでした。
そこで1966(昭和41)年には「長崎県立美術博物館資料基金条例」を施行し財源を確保、「南蛮人来朝之図」屏風(現在、長崎歴史文化博物館収蔵)などの資料が収集されていきました。(条例は1968年廃止)
1970(昭和45)年には今の美術館でも常設されている須磨彌吉郎氏所蔵のスペイン美術資料(須磨コレクション後述※2参照)104点が寄贈されました。


長崎県立美術博物館(2002年)

 


当時の美術博物館の外壁


今も残る外壁の一部

閉館の時
建物の老朽化に加え、以前よりあった美術館と博物館の分離計画が正式に決まり、2002(平成14)年、長崎県立美術博物館は閉館しました。2005(平成17)年に美術館は出島に新築移転、立山の跡地には同年、長崎歴史文化博物館が開設されました。それまでの収蔵品は江戸期までを歴史文化博物館が、明治期以降を美術館が所有する形となりました。
 

以前 長崎歴史文化博物館開設の際の紹介ページはコチラです


 

今も残る外壁の一部
重厚で美術博物館の象徴でもあった 田中栄作氏デザインの外壁(左の写真@、A)は取り壊しの後、跡地に建てられた歴史文化博物館裏手にある長崎県防空本部跡(立山防空壕/見学無料)横に2枚の巨大な壁画として、その一部を今もとどめています。その大きさと精微な彫刻の素晴らしさを実際に観て感じてください。

 

 
現在の長崎県美術館
2005年4月23日、旧長崎県立美術博物館の美術館機能と、スペイン美術、長崎ゆかりの近代美術の収蔵品を引き継ぎ、長崎水辺の森公園に隣接した出島町に開館。今年(2013年)で8周年を迎えました。
建物は著名な建築家の隈研吾氏と日本設計が設計したことでも有名で、グッドデザイン賞やイタリアのマーブルアーキテクチュラルアワードのほか、建築業協会賞、日本建築家協会賞、日本建築学会作品選奨など数多受賞しており、建築ファンにも人気の観光名所の一つにもなっています。

   
空中回廊
建物は運河を挟んでギャラリー棟と美術館棟の2つの建物から構成されており、2階の渡り廊下によって運河上をつないでいます。幅約9m、長さ約30mにおよぶこの空中回廊からは、両側のガラス越しに運河や長崎港を見渡すことができます。ここにはカフェがあり、昼間は水のきらめきを眺めながら、夜には幻想的なライトアップの中で景色を楽しみながら、スペインのワイン、軽食、お茶等をお楽しみいただけます(カフェ利用時、入場料はかかりません。)

   
アートビジョン
館内の案内や最新情報、映像作品などを発信しているLEDの大型映像装置(アートビジョン)は入り口の右手外側にあります。美術館の独創的な「動くシンボルマーク」となっています。

屋上庭園
「長崎水辺の森公園」と緑がつながる屋上庭園。 芝生が敷き詰められ、空中回廊と同じようにギャラリー棟と美術館等の2つの建物を繋ぎ長崎港を一望できる憩いのスペースとして提供されています。

   
収蔵作品
東洋有数の規模を誇るスペイン美術コレクションの数々は長崎県美術館の大きな魅力であり特色の一つです。「須磨コレクション※2」と呼ばれるプライベートコレクションを母体とし、総数約1,200点にのぼるコレクションは中世から現代に至るスペイン美術を網羅しています。
他にもスペイン美術と並び収蔵品の大きな柱となるのが、明治期以降の長崎ゆかりの美術です。長崎県出身作家の作品や、長崎をテーマにした作品など約4,500点を収蔵しています。
これらの作品は美術館棟2Fの常設展示室でみることができます。
 
※2須磨コレクション
 1940年から46年にかけ、特命全権公使としてスペインに赴任していた
 故・須磨彌吉郎氏(1892-1970年・秋田県生まれ)が、在任中にスペインなどで収集した
 美術コレクション。総数1,800点に及ぶ作品のうち、500点 が長崎県美術館に収蔵されて
 います。
 

 

 


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長崎県美術館 交通アクセス
路面電車 長崎駅前から【正覚寺下行き】に乗車し【出島】で下車、徒歩3分
路線バス 長崎駅前南口から【新地ターミナル行き】に乗車し
・【長崎新地ターミナル】で下車、徒歩5分
・【大波止】で下車、徒歩8分
自動車 ○JR長崎駅から 野母崎・県庁方面へ向って約8分
○長崎自動車道、福岡・諫早方面から長崎IC・ながさき出島道路を出て
  約1分
※駐車場は付近の有料駐車場をご利用ください。
 『県営常盤駐車場(北側、南側)』及び『県営出島駐車場』は美術館
 ご利用で割引が適用されます。
     
開館時間:10:00〜20:00(事業により時間を変更することがあります。)
休館日:毎月第2・第4月曜日(休日・祝日の場合は火曜日が休館)・年末年始
※事業により変更になる場合があります。
〒850-0862 長崎市出島町2番1号 TEL095-833-2110
 
 
長崎県美術館のホームページです
 
長崎歴史文化博物館のホームページです
 

出典・取材協力:長崎県企画振興部 文化振興課 /長崎県美術館(公益財団法人 長崎ミュージアム振興財団)

 

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